満員電車で寝てたらおっぱいに殺されかけた。
僕は毎日満員電車に乗っている。
始発駅からなので、端に座れるまで電車をやりすごし、必ず端の席に座る。
そこから一時間ほど、僕は寝ながら通勤している。
僕が乗っている電車は、ひどいときは人の上に人が座るくらい混む。
吊革につかまってた人は、押されて前かがみになってしまい、窓ガラス等に手を突いて耐えていることもしばしばだ。
でも僕には関係ない。端に座ってすやすやねむって、駅に着いたら降りるだけだ。
そう思っていた。
ある初夏のさわやかな朝、僕は、おっぱいに殺されかけた。
僕はいつもの通りに眠っていた。いつもの通り前にかがんで猫背になって、いつもの通りに眠っていた。
45分くらいたったころだろうか、僕は髪の毛に誰かが触っている感じがして、目を覚ました。
僕は不用意に顔を上げた。
顔を上げたらおっぱいがあった。でかい。温度を感じる距離だ。
僕はまだ死にたくなかったので、姿勢を正してできるだけ背もたれの方によけた。
次の駅につくと、人がわんさか乗ってきた。おっぱいは、押されて僕の方に倒れてきた。
僕は物理的に限界までよけた。
でもおっぱいは向かってきた。イライラ棒の気分だった。
振れたらゲームオーバーだ。
少し汗ばむおっぱい。
僕の眼鏡が少し曇る。
柑橘系の匂いもする。
目の前に、白くて柔らかい天国が広がっている。
まだ触れたことのない未知の世界が広がっている。
僕の心も死にそうだった。
しかし僕は避けきった。避けきったのだ。
かすめることもなく、完璧だった。
これでまた今日から平和に過ごすことができる喜びに打ち震えた。
信じてもいない神に感謝した。
社会的に生き残ることができる喜びを、僕は生涯忘れない。